ピエール・バイヤール『アクロイドを殺したのはだれか』
『読んでいない本について堂々と語る方法』の人の、それ以前に出ていた単行本です。
アマゾンでむやみと高値がついているので、手放したらもう手に入れられないかもしれないと思い、先の週末に読んでみました。
まず、『アクロイド殺人事件』を読んでいない人は、この本を読んではいけないというタイプの本です。つまり当然ですが、ネタバレしてます。ものすごく詳細に渡ってネタバレしてます。
『アクロイド殺人事件』については、ミステリーに興味を抱き始めたらできるだけ早いうちに読んでおいた方がいい作品だと思います。
それは、この作品が傑作かどうかとは関係なしに(僕は傑作だと思うけれど)、この作品のネタバレには、うっかりしているとどこかで出くわしてしまう可能性が高いから。
僕みたいに、読んだ本の内容を見事に忘れられる才能の持ち主であれば、『アクロイド殺人事件』を二度読んで二度目にもびっくりできたりしますが、さすがにそんな僕でも三度目は騙されません。ピエール・バイヤールのこの本も読んだし。
この本でネタバレしているのは、『アクロイド殺人事件』に限りません。クリスティのポワロものの有名どころはことごとく、犯人やトリックがばらされてます。ので、これからポワロものをいろいろ楽しみたいと思っている人は、この本は最後に取っておいた方がいい、というようなものです。
ただ、ポワロものを十分楽しんだ後でこの本を読むと、刺激的な論考で面白いです。
この本のタイトルの主題は、ちゃんと追求されて最後に一つの答えが出されます(アクロイドを殺したのは実はコイツだ! と)。それ自体面白いけれど、ミステリーの読みの実践を通して、より広い射程で、小説とはどういうものか、それを読んだり解釈したりすることはどういうことか、というところまで考えさせられます。
この本を読んで、いま僕がすごく気になっているのは、ソポクレスの『オイディプス王』です。ピエール・バイヤールが『オイディプス王』について面白い指摘をしていたのです。
父ライオスを襲って殺したのはオイディプス一行ではなかったかも? っていう。テクストに沿って読むとそう読めると。いやぁ、確認したい。
「たにまち月いち古書即売会」は2月17日(金)から。
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